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微細加工技術コラム

マシナブルセラミックスへの微細加工

マシナブルセラミックスは、主に半導体・電子部品のプローブカードなどに使用される材料であり、マシニングセンタで切削加工を行えるように開発されたセラミックのことを指します。一般的には、ホトベールⅡSやマセライトSPといった名前のマシナブルセラミックスが採用されることが多くあります。

こうして開発されたマシナブルセラミックスが開発された背景としては、それまで採用されていたエンジニアリングプラスチックでは要求仕様を満たせない(特に温度特性面において)といったことが挙げられます。具体的には、マシナブルセラミックスはエンジニアリングプラスチックよりも①温度特性が良い、②温度変化による寸法への影響が少ない(熱膨張係数小さい)、③耐熱性が高い、といった特徴を上げることができます。こうした特性を活かして、仕様環境温度が厳しい電子機器、例えば半導体のプローブカードのような連続使用していると温度がどんどん上昇していくような環境で使用される製品にもっとも適していると言えます。こうした環境下で熱膨張による寸法変異が機器の性能に大きく影響を与える製品には、その影響を抑えるためにエンジニアリングプラスチックではなくマシナブルセラミックスが採用されています。また、こうした温度特性が良いといった以外にも、マシナブルセラミックスは耐酸性・耐アルカリ性が高い、絶縁性も高いという特徴もあるので、様々な環境で使用することができ、使用領域が広いといったことも言えます。

微細加工の分野においては、このマシナブルセラミックスはその名のとおり切削加工に非常に適した材質であると言えます。マシナブルセラミックスの比較対象としてはジルコニアやアルミナなどのファインセラミックスが挙げられますが、これらのセラミックよりもマシナブルセラミックスはマシニング加工に適しています。その理由としては、ファインセラミックスは生産ロットによる素材のばらつきが大きく、切削による加工精度を保つことが難しいとされている一方、マシナブルセラミックスはファインセラミックスと素材の結合が違うので、微細加工を行う加工者の立場から見るとエンジニアリングプラスチックや樹脂のような感覚で微細加工を行うことができるので、精度・品質を保つことがファインセラミックスより適しています。また、エンジニアリングプラスチックなどの樹脂の微細加工と比較した場合、こうした樹脂は品質上バリが問題になりますが、マシナブルセラミックはバリがほとんど発生しません。従って、例えばφ0.03×1024穴のような微細穴加工を行った場合には、マシナブルセラミックスを使うとバリがほとんど発生しないため、品質の高い微細穴加工品を得ることができます。このような特性を持つマシナブルセラミックスですから、他の分野、自動車関連の部品にも採用されることもあります。

なお、温度特性面においてはマシナブルセラミックスよりもファインセラミックスのほうが上ですので、マシナブルセラミックスで対応できない温度環境では、どうしてもファインセラミックスを使用せざるを得ない場合もあります。こうしたセラミックなどの硬い材質は、例えば穴の中に切削屑が残っていると刃物やワークに悪影響を及ぼすので、微細加工においては特に注意が必要です。小さな微細穴加工では切削加工と同時に屑を排出するようなプログラムを組んで加工を行うことが必要です。