微細加工技術コラム
100μmの微細穴加工を行う場合の加工手順
微細穴加工の手順
100μmの微細穴加工では、加工そのもののテクニック以前に「加工の前提条件を揃えること」が精度を大きく左右します。特に、穴の位置・深さ・径といった仕様の整理、治具・工具の選定、回転数や切削条件の設定、恒温環境の維持といった事前準備が重要です。
事前準備と環境設定
加工条件の設計と治具の準備
最初に行うべきは、加工仕様(穴の位置・深さ・径)を正確に整理することです。100μmの穴は寸法が小さい分、穴位置のズレや深さ誤差が製品の性能に直結しやすく、設計意図を踏まえた加工プログラムの作成が欠かせません。
また、治具についても「ワークを確実に固定し、加工中の微小な振動やズレを抑えられる構造」であることが重要です。ワーク固定が不安定な状態では、加工中に微細なブレが発生し、穴位置や真円度の悪化につながります。
工具のセット
工具のセットでは、単にチャックに取り付けるだけでなく、工具の保持状態や突き出し量を適切に管理する必要があります。特に突き出し量が長すぎると工具剛性が低下し、振れ・たわみ・折損のリスクが高まります。
そのため、必要最低限の突き出し量に抑え、加工時の安定性を優先したセットアップを行うことが必要になります。
恒温環境の準備
100μmの微細穴加工では、温度変化による材料寸法や加工機の熱変位の影響を無視できません。加工精度を安定させるためには、加工室の温度を一定に保ち、機械とワークの状態を安定化させる恒温環境の準備が重要です。
理想的な加工環境として、室温を23.0±0.5℃に維持する運用が挙げられます。微細加工では、加工室の温度が数℃変化するだけでも、ワーク寸法・位置精度・測定値に影響が出る可能性があります。
芯振れ測定と深さ測定の設定
微細穴加工の精度を左右する最重要ポイントの一つが「工具の芯振れ(振れ精度)」です。100μmの穴では、わずかな芯振れでも穴径・穴位置・工具寿命に影響を与えます。
そのため、加工前に芯振れと深さ測定の基準を正しく設定し、再現性のある加工条件を整えることが重要になります。
工具長の正確な測定
穴位置精度を確保するためには、工具長を正確に測定し、加工機へ正しい補正値を入力する必要があります。例えば、式工具測定器などを活用して工具長を測定し、工具径補正値を反映させることで、プログラム上の穴位置と実加工位置の差を最小化できます。
芯振れ対策
微細穴加工時に芯振れが発生している場合、工具が回転した際に刃先が理想軌道からズレ、狙いの穴径より大きくなったり、穴位置が微妙にズレたりする原因になります。
さらに、芯振れが大きい状態で微細工具を使用すると、工具への負荷が偏り、摩耗が急激に進むだけでなく、折損のリスクも高まります。
静的測定と動的測定の実施
芯振れ管理では、工具を取り付けた状態での測定(静的測定)と、実際の回転条件での確認(動的測定)の両方を行うことで、より安定した加工精度を確保できます。
静的測定
静的測定では、工具をセットした段階でピックテスターなどを用いて振れ量を確認します。ここで振れが2μm以下に収まっているかを手動でチェックし、基準を満たしていない場合は工具の取り付け状態や保持方法を見直します。
動的測定
動的測定では、実際の穴あけ加工で使用する回転数まで主軸を回し、暖気運転状態で振れを確認します。
静的測定だけでは分からない回転中のブレや主軸の状態変化を把握できるため、微細穴加工では動的測定を行うことでより確実な品質確保につながります。
中川製作所では、すべての微細穴加工において静的・動的測定を徹底して実施することで、工具折れや穴の位置ずれのリスクを低減し、高精度な微細穴加工が可能となります。
穴あけ加工の実施
芯振れや補正値の設定が完了したら、実際の穴あけ加工へ進みます。
センタリング・プレ加工の実施
穴位置の振れ・ズレを防止や精度の向上の為に、センタリングドリルや短めのドリルを使用することで、実際の微細穴加工の振れを抑えることができます。このプレ加工により、本加工用のドリルの穴位置の振れ・ズレを効果的に防止し、高精度な微細穴加工が可能です。
本加工の実施
本加工では、切り粉が穴内に残ると工具への負荷が急上昇し、工具折損や穴品質悪化の原因になるため、加工中は切り粉の排出状況を確認し、工具への巻き付きが発生していないかを継続的に管理することが大切です。
また、切削油を適切に使用することで、工具摩耗の抑制や加工熱の低減につながり、高精度な微細穴加工の安定化が期待できます。
検査と評価
微細穴は接触式測定では測定子の影響が出るケースもあるため、非接触測定器や画像測定機を活用して穴径・穴位置・形状を確認することが求められます。
検査では、穴径だけでなく、穴位置のズレや深さのばらつきも含めて評価し、要求仕様に対して問題がないかを総合的に判断します。中川製作所では、ミツトヨ製の画像寸法測定器を用いて、加工後の品質管理体制も整えております。
当社の加工事例のご紹介
SUS304 半導体製造装置 微細穴加工
旋盤加工で製造されたボルトに斜め穴加工を行った事例になります。
穴の角度や位置を安定的に加工するために碌々産業のアンドロイドの5軸使用を使用し、5軸テーブルを活用することで、±5/100mm精度の穴加工を実現しております。
今回の加工では、ベント穴は一つですがお客様のご要望に応じて様々な角度や複数個の穴加工に対応いたします。
ホトベール 微細穴加工(段穴加工)
こちらは、マシナブルセラミックスの一種であるホトベールに対して微細な段穴加工を施した事例です。
ホトベールはスーパーエンプラと比較して、熱膨張率が低いため、半導体製造装置、液晶製造装置、電子機器、断熱部品、真空装置部品、熱処理冶具など幅広い分野で使用されています。一方で、セラミックスの性質上、加工中にかけやすいです。そのため、当社では、専門の治具を制作し、ドリルの回転数や送りスピードなどの加工条件を工夫することで加工中にホトベールが破損してしまう可能性を最小限にしています。
微細穴加工なら微細加工ドットコムにお任せください
今回は100μmの微細穴加工を行う場合の加工手順についてご紹介しました。微細加工ドットコムを運営する中川製作所では、μm単位の微細穴加工を得意としており、品質検査体制まで自社で完結して行うことで高精度な加工品を提供いたします。







